[Album] Yeule – softscars [FLAC / 24bit Lossless / WEB] [2023.09.22]
前作に続きムラ・マサがプロディースおよびギターやベース、ドラムの演奏でも参加! 音楽シーンだけでなく様々な世界で異彩を放ってきた ユールが最新アルバムを【Ninja Tune】よりリリース!! シンガポール出身で現在はロサンゼルスを拠点に活動しているアーティスト、ナット・チミエルによるプロジェクト、ユールのサードアルバム『softscares』が【Ninja Tune】よりリリース。 ファイナルファンタジーのキャラクターを由来とするyeuleという名を自らに付け、2014年にセルフタイトルEP『Yeule』でデビューして以来、幻想的でドリーミーなポップサウンドやロンドンでファッションを学び身につけた独特のアート感覚が熱烈な支持を集め、音楽シーンの中の異質な存在としてカルト的な人気を獲得している。 壊れたコンピューターコードやエラーメッセージをテーマにした2022年リリースの前作『Glitch Princess』は、バーチャルとリアル双方で発生する様々なエラーやバグをノイズやファンタジックな音色を使い表現し、チャーリー・XCXやキャロライン・ポラチェクなどのプロデュースを手がけてきたダニー・L・ハールなどと共に作り上げた新感覚のエレクトロポップサウンドが高く評価され、PitchforkでBest New Albumを獲得するなど、ユールの表現者としての覚醒の瞬間が収められた会心作と言える内容だった。 そこから約1年という短い期間を経て早くも届けられた最新アルバム『softscares』は、パンデミック期間中の混乱で人との繋がりが断絶され、親しい友人をオーバードーズで亡くすなど心に大きな傷を負ったユールが、自らと向き合いこれまでの人生を回想し、幼少期の自分と対話することで見えてきた深層心理を描いた作品となっている。 ユールは今作について、「傷跡というメタファーを使ってそれぞれの曲を表現した。傷跡ひとつひとつが柔らかいまま」「心理的トラウマであろうと肉体的な傷であろうと、時間が傷跡を完全に治すことはない。痛みがなくなった後も、傷跡は残る。私の先祖たちが経験して受け継がれてきたことを感じるの。トラウマは消えない。私の人生にはいつも腐敗や歪みがあって、いつも悪いものや醜いものもあった。だから傷跡は、私が守られていることや、私自身を守るべきことを思い出させてくれる」と語り、苦しみや悲しみ、痛みなど過去の様々な経験により生まれた傷跡こそが自分自身を形成する大切な要素になっているということを鋭く大胆な視点で描いている。 マイ・ブラッディ・バレンタインやヨ・ラ・テンゴ、スロウダイヴなどのバンドに大きな影響を受けたというユールのギターサウンドへの愛や熱が今作のサウンド面でのキーとなっていて、重たく難解な内容が多い楽曲に寄り添いながらその想いをエモーショナルに浄化させるポジティブなバイブスが作品全体を包んでいる。 アコースティックな質感も交えた歪みの効いたシューゲイズサウンドと近未来感漂うサイバーなエレクトロサウンドが同居した響きは、どこか懐かしく得も言われぬカタルシスを生み出している。 プロデュースはユール自身に加えユールと度々コラボしている「シンガポールのアンビエント・ボーイ」と称されるキン・レオンが全編に渡り携わっており、さらにイヴ・トゥモアやヤングブラッドなどをプロデュースしているクリス・グレアッティ、そして前作アルバムに引き続きムラ・マサがプロディースおよびギターやベース、ドラムの演奏でも参加している。 前作に日本のラッパー、Tohjiが参加していたり、楽曲に日本のアニメや駅のホームの音声を使用するなど、日本との繋がりもユールの作品を形成する重要な要素の一つだが、今作でも岩井俊二監督の日本映画「花とアリス」のサウンドトラック収録の「fish in the pool」をカバーしていて、日本のカルチャーからの大きな影響が窺い知れる。 ...